薬草と健康47号2p

変革期の薬草の在り方

        
             徳島県立保健製薬環境センター所長
                        三宅 崇仁

 令和3年度機関誌「薬草と健康」の御出版おめでとうございます。
徳島県薬草協会の皆様におかれましては、御健勝のことと、心からお慶び申し上げま
す。
 令和3年1月、新型コロナウイルスは世界中で猛威をふるい、感染者数も増加の一途
をたどり、再び、緊急事態宣言が出される事態となりました。全世界で新型コロナウイ
ルスのワクチンや治療薬等の研究が進められており、日本においても、大きな関心が寄
せられています。
 その中には、「徳島県産の藍の抽出物に、新型コロナウイルスを不活化する効果を確
認」という奈良県立医科大学の研究発表もあり、今後、感染対策用としてうがい薬など
への応用が期待されます。
 さて、徳島県は気候風土に恵まれ、多くの薬草が自生しており、県民は、薬草を採取
し、利用してきました。徳島県にゆかりのある薬草由来の医薬品の一例としては、古く
から胆石、腎石、尿路結石などに使われてきた民間薬「ウラジロガシ」が、尿路結石治療
剤「ウロカルン」として製品化されたことがあげられます。
 当センターにおきましても、近年、ドクダミについて、有効成分分析と製茶法に関す
る研究を行いました。ドクダミは、日本三大民間薬の一つであり、花期の地上部は生薬

「ジュウヤク」として、花期以外のものは主に健康茶(ドクダミ茶)としての活用の可能
性について利用されています。
 ドクダミを健康茶として利用する場合、年3回(花期、夏期、秋期)収穫できるものの、
これまで、花期以外のドクダミの有効成分量の報告はありませんでした。
 そこで、ドクダミの収穫時期、乾燥条件及び有効成分量と嗜好性の関連について、調
査研究を行い、有効成分量が高く高品質な健康茶としての可能性について、検討しまし
た。本研究は、県の農林部局と当センターが連携し、障がい者支援施設への製茶法や乾
燥方法などの技術支援を行う「農福連携」事業の一環として実施しており、今後、ドク
ダミの商業的利用の推進や地域経済活性化につながればと考えております。
 このように、身近な薬草についても、新たな視点で検討することにより、さらに活用
を拡げるような取組が進むことを期待しております。
貴会員の皆様方の「薬草に関する正しい知識の普及啓発」、「薬草の栽培技術指導」など
の活動が、薬草が多くの方に活用されるきっかけとなり、健康の維持・増進につながる
ことを祈念し、結びとさせていただきます。

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